【拝啓、トヨタ様】
「クルマから離れていたのは、お客様ではなく私共メーカだったのではと感じております。」
この言葉、豊田章男社長のプレスブリーフィングの中で一番印象に残ったものです。
最近の若者のクルマ離れに対するメーカの反省として出た言葉だと思うのですが、離れて作られたクルマはどのようなものなのか?安くて壊れず長く使えるクルマ、道具としてならばこれ以上のものはないでしょう。しかし、好んで乗ってもらおうとした場合は単純に道具では済まなくなってくる気がします。
ずっと運転していたいクルマ=楽しい、面白いクルマとは何か?その答えの一つがFT-86ということなのでしょう。今、コンパクトFRカーを出そうとすることは効率化、省力化という世の中の流れに逆らうことになるのですが、あえてトライするところにメーカの危機感とその本気度を感じます。まぁ、20数年前、ほとんどの小型車が次々とFF化していくときに薄々感じてはいましたけど・・・。
もっとクルマの本質、ただ移動するだけじゃない何かがあるから夢中になっていた人たちが存在したと思うんですよね。これは決して古きよき時代ではなくて、現代だって十分通用すると思うのですが、いかがでしょうか?
【FT-86概略】
FT-86とは、FUTURE―TOYOTAの略とのこと。決して、FUJI(重工)―TOYOTAではありません、あしからず。
トヨタ社内でも以前から開発案件の中にあった小型FR車ですが、この未曾有の不況にも負けず発表に至ったのは章男社長がいたからこそともいわれています。
スバルとのコラボで、低く縦方向の寸法が短くてすむ水平対向エンジンが手に入り、なおかつプラットフォーム、パワートレインがうまく流用できるため、早く安く作れると踏んだことから本格的に開発が進んだということでしょう。事実、量産は現行R2を生産している工場を使用する予定とのことです。
ただ、実際の発売は’11年であり、あと2年もあるのですが一体何にそんなに時間をかけるのでしょうか?もう、今このままでも十分とも思えるのですが・・・。
【AE-86との比較】
過去AE-86オーナであった私が、雑感、希望を交え新しいFTスペックと比較してみます。そもそも、AE-86の魅力、というか良かったところを振り返りますと、
購入できる価格帯。
のっけから現実的ですみません。でも、これが一番大事です。どんなに楽しくても手に入れられないのでは話にならず。AEの場合は、それまでのカローラシリーズの一部ということで
流用できる部品やプラットフォームがあったため相当安く設定され諸経費込みでも200万円は行きませんでした。対して、FTですがどうでしょう?巷では200〜250万円といわれておりますが、出来れば200万円を切ってもらいたいところですね。(無理だろな〜)
小さく、軽く、取り回しがよい
車体サイズ、重量について、まずAEは、全長L4,180×全幅W1,625×前高H1,335[mm]、ホイールベースWB2,400[mm]、940[kg](GTアペックス)でした。
全幅、小さかったんですね〜、今の軽自動車+150[mm]です。車重も最も重いグレードでこの数値ですから、軽かった。いや、確かに衝突安全基準も低く、エアバッグって何?という時代でしたから仕方ありませんが。
さて、FTですが、L4,160×W1,760×H1,260[mm]、WB2,570[mm]、1,200[kg]推測となっています。なんと全長はAEより短くそれでいてホイールベースが長いんですね。ということは、つまり前後のオーバーハング量が少ないということになり、さらに全高も低くまた全幅も広くなっているため、確実にAEよりもコーナリング性能は高いことになります。まぁ、AEはノーマルで乗る限りはちょっと曲がりにくいクルマでしたから全然別物ですね。あんまり、簡単にコーナリングしてくれちゃうのも可愛げがありませんが、ただ、車重は現代の安全基準を満たすため、遥かに重くなって大人4人分がプラスされます。エンジンパワーを上げれば済むことですが、そうなるとさらに車重が増し、さらにパワーアップし・・・。
軽量小型という理想のクルマからどんどん離れていきますが、そこは最新技術を駆使して、あと100[kg]減量できませんかね?(これも無理か〜)
エンジンレスポンスがよく、燃費もそこそこ
AEの心臓部は、当時1,600[cc]では初めて4バルブ化した小型軽量エンジン4A-Gでした。それまで、ベースとなった1,500[cc]=3A-Uに慣れていた私は、試乗会に行った時に衝撃を受けました。アクセルペダルに足を乗せたとたんにタコメータの針がふわりと上昇したんです。踏みこまずに触れただけで、エンジンが反応したのには驚きました。そして、そのまま契約書にサインする羽目に。
また、このエンジンは財布にも優しかった。夜な夜な山道を走っては、タコメータの針をレッドゾーン近くまで踊らせるようにしても10[km/L]を割らず、おまけにレギュラー仕様でした。
FTはどうでしょう?スバルの水平対向4気筒・EJ20をどこまでレスポンスよく仕上げてくるでしょうか?気兼ねなく走るためにはある程度の燃費性能も必要ですね。レギュラー仕様もぜひお願いしたいところです。
あと、コンセプトカーだから許せますが、タイヤだけはもっと小径にして欲しい。
19インチ標準じゃ、維持費がたまりませんから。AEは13インチ標準でしたから、今の軽自動車みたいなものでした。16インチからスタートということでいかがでしょう。
登録上、定員5名
これも実は重要で、確かに普段は1〜2人しか乗りませんでしたが、たまに5人フル乗車がありました。リアシートは、3人乗るにはあまりに狭かったので緊急用でしたがあるとなしでは大きく違います。FTは、センタートンネルが大きくリアシートが分断されバケットシート状になっているため、定員は4名になっています。出来れば、これも5名にして欲しいところです。
意外と高い積載性
私が乗っていたのは、GTVという3ドアハッチバックでしたが、独り者の引越し程度ならリアシートを倒すことにより簡単に収まってしまいました。ツーリングワゴンまでは行きませんが、あらゆることに使えましたね。その点、FTはクーペスタイルなので、少し積載性は落ちるでしょうが、剛性確保からは有利かと。できれば、これもAEのように2タイプ用意して欲しいところです。(これはまず無理!!)
そこそこ格好よいこと
車、特に趣味のクルマは、デザインが重要です。AEはすごく格好よいというわけではなかったですが、愛着のわく相棒という感じが好きでした。特に私の場合は、トレノでしたのでリトラクタブルのヘッドライトがメカっぽくて好きでしたね。そういえば、最近ほとんどこのタイプを見ませんが、やはりコスト、軽量化、衝突安全性などの影響なのでしょうか?
FTはまだコンセプト段階で市販までには時間があり、このままでは出ないと思われますが完成度としてはかなりのところまで来ていると思います。特に水平対向エンジンを使用したためか、フロントタイヤハウスとボンネットの高さにほとんど差がなく、とてもエンジンフードが低い精悍な感じを受けます。エンジンルームは残念ながら非公開ですが、かなり低く、前車軸よりも若干後方にエンジンが搭載されているのではないでしょうか?スバル車ではAWDのためかフロントオーバーハングが大きめなのに対し、これはFRの恩恵かもしれません。
チューンニングパーツが豊富
アフターマーケットも含めて、AEの場合は沢山のパーツが揃っていました。また、古い設計の部品も共用化されており、意外な車種の部品が使えたり。FTもそのあたりは、期待出来そうです。なにせ、TRDとSTIがあるのですから。ただ、トヨタ車にSTIのステッカー(またはその逆)を貼るというのも面白いですね。
というわけで、外国勢が参加せずただでさえ話題の少ないと思われがちな今回のモーターショーで、プレスの人だかりが中々途切れないほど人気があったFT-86CONCEPT。
AE-86が発売された頃では見向きもされなかった普通の小型FR車が、今ではその稀少価値で話題になるとは思いもよりませんでした。ともあれ、大メーカ、トヨタが本腰を入れて開発しているFT-86、大いに期待しようではありませんか。
おまけ:発表時、たまたま後ろにいたため録れたFT-86の排気音、いわゆるブリッピングをお聞きください。水平対向がわかりますか?