ルポ 3L TDI:試乗記 (Lupo 3L TDI)
筆者:津々見友彦

地球環境保護のために日本でもホンダから100kmを3リッターのガソリンで走りきれると言う”3リッターカー”、インサイトが誕生しているが、実は3リッターカーではこのルポ3L TDIが先輩である。昨年7月からドイツで発売され既に6000台が走行していると言う。ホンダのインサイトがガソリンエンジンと電動モーターのハイブリットであるのに対して、このルポは軽量で効率の良いディーゼルターボエンジンを使用。また、ボディそのものも徹底した軽量化を行い、インサイトの2人乗りに対して4人乗り、それにノーマルルポと同様な荷室を備え実用的な車だ。
3リッターカーを実現したのは大きく分ける次の3点が要因だ。
- 効率の高い1.2リッターディーゼルターボエンジン
- オートマチック5速ギヤミッション
- 軽量コンパクトな空力ボディ
ボディの基本はノーマルルポそのものだが、転がり抵抗と慣性抵抗の低下のためにエンジンフード、ドアなどアルミ化し軽量化が図られた。サスペンションには鍛造アルミ合金など使用し、ドライブシャフトも中空構造で軽量化、またテールゲートには内側にはマグネシウム外側にアルミを使うと言う凝った仕様、そしてエンジンもアルミブロックなどにより、ノーマルのルポに対して150kgも軽く仕上がっている。
一方、ボディの空力対策は、フロントバンパー、ラジエターマスクやヘッドライト、それにフロントのウインドシールドの処理、形状がリファインされ、また、テイルゲートの形状も変更。リヤタイヤ前方にもスパッツが与えタイヤ回りの空力特性を向上するなどして空気抵抗を0.29と小さくしたものだ。日本への導入はまだ決定されていないが、今回は取り敢えずプレスに紹介して日本での感触をリサーチする意味あいの試乗テストだ。
<エクステリア>
コンパクトな2ドアハッチはラジエターマスクの空気取り入れ口は小さくされまた、ヘッドライトやフロントウインドの両端はスムーズに処理され、リヤハッチの上部後端を伸ばして空気抵抗係数を小さくしている。昔し、シビックのレーシングマシンがやっていた手法だ。
<インテリア>
さすがにハッとするハイレベルなセンスの良さで、先端テクノロジィをイメージするものだ。メーターパネルはアナログながら明るくスッキリしたデザインで楽しい。メカニカルなイメージのそれは、左にタコメーターで4500rpmからレッドゾーン。その中に燃料計とアナログの燃費計とLCDのクロック、そして右のスピードメーターにはデジタルの燃費表示などが表示される。ステアリングホイルはマグネシュウム製のフレームの軽量でスポーティーなもの。オートマチック5速ギヤミッションのシフトノブもモダーンでなかなかシャープなデザインで楽しい。いかにもハイテクマシンらしい雰囲気だ。
--フロントシート--
バックレストしっとり感があり、また包み込み感もありスポーティーな雰囲気でよい。ただし、ランバーサポートの位置が日本人にはやや高すぎるのか・・。
ルーフまでのゆとりはまずまずの広さだ。
--リアシート--
バックレストはビシッと固めに感じるもので、背中が伸びて気持よく座れた。ただし、もう少し角度が寝ていると更に嬉しい。ヘッドルームは8cm程度、膝のゆとりは10cm程あり、外見よりはゆとりのある後席だ。2人が苦しくなく座れるスペースを確保している。
<動力性能>
エンジンはアルミブロックの1.2リッター3気筒ディーゼルターボだ。このエンジンの詳しい解説は熊野氏がエッセイで書いて頂いているのでそれを参照して欲しいが、61PS/4000rpm,最大トルクは14.3kgm/2000rpmの出力をもつもの。低回転からのトルクもあり、1500rpmあたりからトルクは有効だが、本格的には1700rpm以上のトルクがしっかりとした加速に入れる。
100km/hクルージングは5速で2000rpm程度。この回転数なら加速もスムーズに行えイライラ感のない走りが可能だ。これなら、カタログ表示の165km/hは出そうな様子だ。0−400加速は20秒相当らしい雰囲気だ。が、実際の加速性能はもう少しよい。と、言うのはオートマチックの5速ギヤミッションのシフトアップ時のクラッチミートまでの空走時間が結構長く、このような加速テストでは損をしていた。
<操縦性>
タイヤはBSのB381のECOタイヤだ。スチールコードの代わりにアラミドファイバーを使った軽量なもの。また転がり抵抗を軽減したものでタイヤサイズは155/65R14。
パワステ仕様ではないため、タイトなコーナーで大きく切り込むと手応えは結構重めとなり、女性ではやや辛いかも。コーナリングのパフォーマンスはやはりエコタイヤだけあり、絶対的なコーナリングフォースは低いのは否めなく、攻めた走りでは狙いのラインからアンダー傾向が出てきて、ややラインを外れるが余程スポーティーな走りをしない限りコーナリングパフォーマンスに大きな不満はない。 それより、直進状態でのステアリングのフィールは手応えはやや甘いが、高速のレーンチェンジでもタイヤの応答遅れ感はなく、意外にキチンとレスポンスしてくれ、ロールも適度に押さえられ安心感は高かった。
<居住性>
--静粛性--
アイドリングも予想以上に静かだ。もっとも”カリ、カリ”とディーゼルらしいサウンドが響くのでそれと判るが振動も小さく静かなディーゼルエンジンと言える。
100km/hクルージングでのエンジンノイズやロードノイズ、それに風切り音も小さめで好感が持てる。また、交差点などで停止すると3〜4秒後にはアイドリングストップするので、シーンと静かになる。また、エコノミーモードでは、アクセルから足を放すとクラッチが切れ、フリーで走行。ブレーキングするとクラッチはミートする。(センター・コンソールのスイッチをオフにするとアイドリングストップは解除可能、またマニアルモードでもアイドリングストップはしない)
--乗り心地--
小さめのロールの割には乗り心地も不満のないものだ。操縦性と乗り心地とバランスはよく取れていてなかなか上手いセッティングがされていた。
<オートマチック5速ギヤミッション>
LUPOの5MTをベースに油圧でクラッチやシフトレバーをコントロールし、オートマチック化したもの。アルファーのセレスピードなどと同様なシステムだ。クラッチとギヤミッションの方が伝達ロスが少ないからだ。当然ながらぺダルは2つのみ、アクセルとブレーキ・ぺダルしかない。ミッションのシフトレバーはATそっくりで、「STOP」、「R」、「N」、「E」のポジションがあり、「E」位置を左に倒すと「+」と「−」がありマニュアルモードでシフトアップ、ダウンが可能だ。
通常は「E」モードのみでATのように走行出来るものだ。尚、セレクターレバーやアクセルぺダルは全て電子制御でドライブバイワイヤーでコントロールされている。
省燃費カーなので、優雅にスムーズに発進しようとソーッとスロットルを踏み込むが、どうもこのようなデリケートな発進は苦手の様子だ。スムーズに発進させようとクラッチミートするのだが、ミートがスムーズでなく、ガクガクと振動。特にスローの渋滞で僅かに動いては躊躇してアクセルを戻すような時にはこの「ガク、ガク」が一層激しく感じる。
ホンダのインサイトはトルコンとCVTを敢えて使用したのはこの発進やギヤのつながりのスムーズ感を確保するためだった。
50km/h以下の低、中速でのシフトはどうもショックがあるのとシフトアップの時にはどんなに急いでいてもクラッチを切ってからミートするまでの時間が長いのでついイライラしてしまう。かってのいすゞの”ナビ5”で感じたそれだ。もっとも今思えば”ナビ5”の先進性には脱帽するが・・・。
不満の多い低、中速のミッションフィールだったが、80km/h以上の高速走行になると俄然スムーズで快適だった。シフトショックは少なく、スムーズ。シフトダウンですら中吹かしをニュートラルでしてくれ、これも実にスムーズにまるでF−1ドライバーのようで運転が上手くなったような気がする。テストした0−80km/hのような停止からのシフト操作はいささか不満点もあるが、一旦走り出して中、高速領域に入ると快適だった。もし、日本への導入際はこの低、中速のクラッチミートのスムーズさと、急加速をしたいときのミートまでの時間の設定など見直しが必要だろう。
<ユーティリティ>
--ラゲージスペース--
ラゲージスペースはやはりこの車サイズなので、4人乗りの場合は制約されるのは否めないが、それでも、中型ボストンバッグ2個は積載可能だし、2人乗りなら、リヤシートを倒すと大型の貨物の積載も可能となる。
<気に入った点>
燃費は圧倒的に良かった。テストでは主としてアクアラインなど空いた高速道路を走ったので燃費が良いのは当然だが、それでも特に燃費を意識せずに走り、時には急加速などもトライ。2人乗車でのトータル燃費は27km/Lだった。実用的には20km/Lは常時出そう。また、スタイリングもいい。特にインテリアは質感も高い。
<気になる点>
やはり低速でのクラッチミートのショックなど粗削りだ。また、大舵角でのステアリングの重さも気になる。坂道発進は基本的に苦手。ブレーキ・ぺダルを放さないとクラッチミートしないからだ。サイドブレーキで発進する必要がある。
<まとめ>
多分に実験的な車であるが、熱効率の高いディーゼルで3リッターカーにVWはアプローチしたあたりドイツらしい。インサイトが2人乗りのスポーツカー風の空力ボディで、ハイブリット+CVTとしたのに対し、4人乗り+ディーゼル+オートマチック5速ギヤミッションと発想が対照的。4人乗りである点は実用性が高く評価したい点だが、日本での使用頻度の高い低速でのミッションフィール向上を是非期待したい。ドイツでは160万円程度で販売されていて割安感が高い。日本での発売は未定だが、意外にマニアックなユーザーにも受けそうだ。これからはこのような環境にやさしい車の出現が大いに期待される。
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車種
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全長
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全幅
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全高
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ホイルベース
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トレッド 前
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トレッド 後
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乗車定員
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Lupo 3L TDI
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3,529
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1,621
|
1,455
|
2,319
|
1,425
|
1,400
|
4
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エンジン 容積(cc)
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PS
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最大馬力 回転数
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Torque (kgm)
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最大トルク 回転数
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最少回転半径(m)
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10・15モード燃費(km/l)
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1,191
|
61
|
4,000
|
14.3
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1,800-2,400
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5.16
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車重
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W/P
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W/T
|
C/P
|
C/T
|
P/L
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価格
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830
|
14
|
58.0
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0.0
|
0.0
|
51.2
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*価格は全て千円単位
- *W/P
- パワーウェイトレシオ 1PSあたりの車重(kg/ps)
- *W/T
- トルク・ウェイト・レシオ 1kgmあたりの車重(kg/kgm)
- *C/P
- コストパワーレシオ 1PSあたりの価格
- *C/T
- コストトルクレシオ 1kgmあたりの価格
- *P/L
- リッターあたりの馬力
- ●今回の試乗車のみのデータ
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関連記事:エッセイ:世界初、3リッターカー、VW LUPO 3L・TDI(熊野 学)
Update:2000/4/12
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