津々見
貴島さんとロードスターの係わり合いをご紹介下さい。
貴島 孝雄(Takao Kijima)
マツダ株式会社
車両コンポーネント開発本部
第2プログラム開発推進室
ロードスター開発主査
初代からです。1989年に初代を出しましたが、その6-7年前くらいからです。アメリカに出張していた時に、「オープン2シーターがカリフォルニアでは人気がある、復活したい。」と言う現地人からの提案を聞いたんですよ。
津々見
アメリカからですか?
貴島主査
はい、アメリカから。で、その提案をスタディーしてスタートしたのが関り合いのはじまりです。
ロードスターの当初は平井さんが主査をされていました。
プロトタイプは初期のRX-7のサスペンションを使ったオープン2シーターだったんです。
カリフォルニアのスーパーマーケットの駐車場に置いたりしてマーケットリサーチをしたものです。
その後、これはビジネスになるから本格的に開発すると言うこととなった時に、平井主査からRX-7をやっていた私に開発に加わるよう要請がありました。ですが、この当時は他にトラックのタイタンなどもやっていたので、とても時間がありませんでした。
で、残業とか休日出勤で倉庫の角を事務所代りにお手伝いすることになったのが本格的な関りです。
津々見
シャシーを担当されたのですか?
貴島主査
そうです。サスはストラットを利用するよう言われていましたが、スポーツカーですから、ユーザーの方がキャンバーやトーなど自由にアジャスト出来るようでなければいけないと思い、「コストも重量もストラット並にします」と頑張ってダブル・ウィッシュボーンを認めてもらいました。
それと、「パワープラントフレーム」を採用しました。これはRX-7で開発していたのですが、エンジンミッションとリヤデフを一体化するフレームです。これにより発進時の加速振動なども回避できしっかりとしたフレームになります。次期RX-7はまだ先だったので、先にロードスターに採用した訳です。
開発陣はみんなスポーツカーは造りたいクルマでしたから、楽しい仕事でした。
津々見
2代目は主査として・・・。
貴島主査
はい、RX-7の主査も後にやることとなるのですが、2代目ロードスターもやらせて頂きました。
ヨーロッパでの高速安定のためにサスのキャスターを増やしたり、1.8リッターエンジンの高回転域の伸びをよくしたりなどしました。
津々見
それでいよいよ今回の3代目ですね。
貴島主査
はい、3代目も私に主査をやれと言われました。私は長い間楽しい思いをさせて頂いたので、誰か若手に譲ろうと思っていましたが、最初の企画書では「RX-8のサスを使う」と、なっていたので、これではライトウェイトスポーツカーにならなくなると思い、私が引き受けることにしたんです。
津々見
3代目はどんなコンセプトにされたのですか?
貴島主査
“人馬一体”です。実は初代の平井主査から「優等生みたいなクルマは面白みがない。どこか尖ったところがないといけない」とスポーツカーのあるべき姿の薫陶をうけていましたが、その時のコンセプトも“人馬一体”なんです。ドライバーと一体になって意のままに操れるクルマこそ、ライトウェイトスポーツカーの真髄だと思っています。
それで、開発チーム全員で、“人馬一体”のそのフィールを確認するために、コペンから、Z4、アウディTT、S2000、ボクスターなど沢山のスポーツカーを何日も泊まり込んで乗り、酒を飲みながら“おい、どのクルマが楽しかった?”と連日デイスカッションしました。
すると、何と“初代ロードスター”が一番楽しいと言うこととなったんです。
決してスピードが速い訳ではないんですが、動きが機敏で楽しい・・と。
“人馬一体”の大切さをチーム全員で確認しました。
また、数値には出ない、“感性”の部分もスポーツカーには大切なことも確認しました。
津々見
具体的にはどのようなメカニズムがあるのですか?
貴島主査
初代から、2代目へ、そして16年かけて醗酵させて来たのが3代目です。重役さんに“人馬一体”コンセプトを認めて貰い、軽量化を徹底しました。RX-8のサスペンションではなく、軽量な専用サスにしたのもそのためです。トレッドを広げ、重心を下げ、オーバーハング重量を軽量にし、前後の重量配分を50:50に、エンジン、燃料タンクなどはクルマ中央に寄せてヨー慣性モーメントを小さくするようパッケージングにも配慮しました。
ただ、186pの背の高いドライバーも乗れるようにホイルベースを伸ばしました。更に前面、側面衝突安全性の確保や頭部保護、サイドエアバッグ類など、ロールオーバーの際のAピラーの強化など重くなる要素もあり、そのために軽量化には「グラム戦略」で全員で目標値に到達させました。これにはパーツの軽量化や高張力鋼板、アルミなどのを使いました。軽量化は性能ですからね。

パワープラントフレーム(PPF)
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またドライブトレーンには伝統の「パワープラントフレーム」を採用し、またダッシュパネルの振動も押えるよな工夫もして高いボディ剛性も確保したんです。
津々見
エンジンは2リッターになりましたね。
貴島主査
車重も重くなったので、それに見合うトルクを持つ最新型の2リッターを登載しました。充分な加速力を持ちながらそれでいて、“扱いやすさ”を目指したエンジンです。
2リッターで200PSのパワーは出せなくはないのですが、パワーこそ170PSですが最大トルクの90%以上を2,500rpmから出せる特性にしました。いつでも気持ちよく加速させるには低速トルクが必要で、人馬一体”が狙いなんですね。
津々見
2リッターとなり、操縦性や安全性も高めながら価格は抑えられていますが、そのあたりはどうやって解決を?
貴島主査
はい、お金と時間は有限ですが、知恵は無限にあるんですよ。(笑)
皆、知恵を出そうと頑張りました。知恵と言うのは結局“やる気”なんですね。無駄な重量なんて探せばどこにでもあるんです。それを徹底してなくそうとしたのが“グラム戦略”でした。プラスチックのリブまでとりましたから。
津々見
そこまで、徹底してロードスターに注ぎ込んだ情熱は・・・?
貴島主査
ロードスターは“ブランドアイコン”と言って社内でも物凄く高いものなんです。フォードのマネージメントに言わせると“マツダのJewel(宝石)”だと言ってます。これを磨かない訳にはゆきませんよ!(笑)
このクルマはユーザーさんの期待を裏切ってはいけないと言う思いがあり徹底的にやりました。
津々見
どんなユーザーさんに乗って貰いたいですか?
貴島主査
幸い70万台のロードスターの実績を見ますと、若い男性から、女性、それにシニアの方など全方位なんです。
サーキットでタイムトライアルをする、空気のいいところで、秋の紅葉をオープンカーで見に行くなど、ロードスターを持っていることでいい人生を歩んだと思って頂けたら大変嬉しいです。