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Inpression

インサイト
(insight)

筆者:津々見友彦
インサイト
エコカーながら精悍なマスクだ。

<リッター35.0kmの高燃費(5MT、10・15モード)>
 地球温暖化が危惧され、CO2の排出を各方面なで低減させようとするなか、車社会もその例外ではない。欧米ではその中、3リッターカー(エンジン容積が3リッターではなく、3リッターで、100km走行出来る車のこと、そのためにはリッター33.3km以上の燃費が必要)への期待が声高に叫ばれているが、ホンダもその期待に応え3リッターカーを送り出した。それが、このインサイトだ。5MTが10・15モードでリッター35kmと世界のトップレベルに達し、プリウスの後発だけに意地でももぎ取った勲章である。
 パワーユニットはプリウス同様、レシプロエンジンに電気モーターを組み合わせたハイブリッドシステムだ。この組み合わせに関しては似ているが、それぞれのパワーユニットの使い方は異なってる。

<プリウスと異なるコンセプト>
 プリウスが、スタート時はモーターで静かに発進するのに対し、インサイトではエンジンでスタート。つまりプリウスは”エンジン”と”モーター”はほぼ同等(と、言ってもエンジンがメインだが)の地位にあるのに対し、インサイトでは”エンジン”が完全に主で”モーター”はその助っ人に徹している。この方がモーターとバッテリィを小型化(ブリウスはモーターと発電機を備える)出来るからだ。プリウス同様、減速時にはその運動エネルギーを今度はモーターを発電機機能に切り換え、電気エネルギーに回生してバッテリィに貯め、再利用するものだ。いずれも外部からの充電は必要としていない。バッテリー(モーター用)があがったら、エンジンを回してチャージャする。長い間登坂などを連続すると理論的にはバッテリーの電力はなくなるが、コーナーなどで減速するとすかさずチャージしてくれるので、実際には問題はないらしい。

<ユニークなアルミボディ>
 NSXでスタディしたアルミボディの技術が活かされ、スチールの1/3と言う比重のアルミを押し出し加工、ダイキャスト、板材と様々な方法で利用した次世代の実験的なシャシーだ。シビックに比較すると47%も軽量化がされた換算になり、820kg(5MT)と4WDの軽自動車なみの軽量なボディだ。この内エンジン以外のバッテリィやPCUなどのハイブリッド化のための重量が70kg余りというから、ボディの軽さが理解できる。このアルミボディで衝突安全基準をクリアしているのも特筆すべきだ。パーツの一部にはマグネシュームも採用され、レーシングマシンのような車である。
 グレードは1種類でミッションが5MTとCVTのホンダマルチマチックSの2種類が選べる。今回はCVTのATを試乗した。

<スタイリング>
 プリウスの5名の定員に対して、2人乗りのFFクーペだ。空力、軽量化の目的のためにこのスタイリングになったもの。”風がデザインしたエアロフォルム”と言われているが、まさにその通り。スタイリングの担当者が風洞に付っきりで手直しし、Cd値0.25と言うハイレベルの空気抵抗係数の車に仕上げている。フロントマスクは精悍に見え、実際に走っている車を前から見ると意外に存在感がある。空力特性向上のためにリヤは絞り込まれ、リヤホイルは完全にカバードされスムーズだ。(昔私がCGシリーズと言うスポーツカーレーシングでFISCOを走っていた頃、私のLOLA、T212もこのようなカバードされたリヤタイヤだった。空力特性の向上とスポンサー面積の拡大が目的だったが・・・)

<インテリア>
ダッシュパネル
メーター
 シンプルながらダイナミックなダッシュパネル。  デジタルスピードメーターの下に燃費が表示される。

 ワイドに左右に広がるダッシュパネルのデザインはなかなか新鮮だ。メーターパネルは液晶のパネルで、左右にアナログ風のタコメーター、水温、燃料、充電、回生、などのメーターが並ぶ。正面にデジタルのスピードメーター、そしてその下には瞬間、平均の燃費が表示されるもの。マニュアルミッションの場合は、シフトのアップ、ダウンを催促するシフトインジケーターもある。

--シート--
コクピット
 デザインのいいシートとインテリア。

 近未来的なデザインの洒落たバケットシートだ。ソフトに吸いつくような感触で身体を包み込んでくれ、サポート性はなかなかよい。

<動力性能>
エンジンルーム
 1リッターの3気筒エンジン

一旦スピードに乗り出すと快適な走り

 ホンダIMA(Integtated Motor Assist)システム(「主動力のエンジン」と「補助動力のモーター」の組み合わせを言う)  エンジンは得意のVTEC仕様の1リッターのSOHC、12バルブの3気筒。70PS/5700rpm、9.4kgm/4800rpmのパフォーマンスを持ち、これに薄型のDCブラシレスモーターが助っ人し、そのパフォーマンスは10.0KW/3000rpm、(ATでは9.2/2000rpm)、5.0kgm/1000rpmである。低回転のクルージングに入ると吸気バルブを1本休め、シリンダー内に強いスワールを発生させ、リーンバーンの省燃費運転をする。
 モーターの大きな特徴は低回転から最大トルクがバシッと出てそのまま維持すること。その点、レシュプロは低回転でのトルクは弱い。フルスロットルで発進させるとメーターパネルにモーターのアシスト量が100%であることが表示され、エンジンの弱みの低回転ではトルクの高いモーターがアシストし1リッターながら予想以上に軽快な発進をしてくれた。トルク特性は1500rpmでもモーターのアシストで結構トルクがある。2,000rpmからエンジンのトルクがグッと加速感が出て来て、4500rpmからVTECの威力で更にもう一山トルクが上がるもの。低回転から高回転領域の5500rpmまでフラットトルク化を狙っている様子だ。発進加速をさせるとホンダマルチマチックSのATでは0−400加速は19秒台の様子。まあ、発進加速に関しては苛々しない下限あたりだろうか。実用上では大きな不満はなく、一旦スピードに乗ると1リッターとは思えない軽快な走りだ。

<操縦性>
リアビュー
 空力特性を高めるためにファストバックのリヤは横幅も絞り込まれ、従ってリヤト レッドは狭い

 タイヤはこの車のために開発されたエコタイヤ、BSのE391、195/65R14を履く。ころがり抵抗を何と40%も低減したとのこと。サスペンションはフロントはストラット、リヤはトーションビーム式で、FF車のコンベンショナルなレイアウトだ。 パワステは軽目の設定だが、軽過ぎる不安は特にない。固めに設定されたスプリングらしく、ロールは低速では極小さくスポーツカーのようなテイストの走りだが、高速でのロールは結構起こる。が、ロール速度は緩慢なので不安な感じは全くない。
 ハンドリングは小さな舵角では比較的応答は大人しいが、45度の舵角からスムーズにコーナリングに入り、意外に小気味よい雰囲気でコーナーをクリアできる。タイヤはエコタイヤながら、しっかりした雰囲気で不満のない走りだ。定状コーナリングに入ってしまうと、しっかりしたサスペンションと相まって安定してコーナーを通過できる。一般道路の走りでは特に絶対的なコーナリングフォースに不満はなかった。(注:過去のレポートでコーナリングに入ろうとした過渡的な状態でリニアな操縦性 でないとのレポートをしましたが、初期の試乗車のステアリングラックの調整不足で起きたもの。その後調整済みの車を試乗し、スムーズなコーナリングになったことをレポートします。)

<制動性>
 ブレーキはフロントはベンチレーティドディスク、リヤはドラム、そしてABSブレーキ・アシストが装備されたものだ。ぺダルタッチも剛性があり、しっかりと利いてくれた。ブレーキング中にモーターが回生ブレーキとして働いてくれているが、スムーズなブレーキングで安心感が高い。

<ホンダマルチマックS>
 エンジンの燃費特性のよい回転を常用しやすい点でCVTが最も適していると思われる。ステアリングホイルに”D”と”S”のモード切り換えスイッチがあり、エンジンブレーキをより強く使いたい時や、加速を必要とする時には”S”モードにすると倍近いエンジン回転になり強力にブレーキングがかかる。勿論切り換えはスムーズだ。

<居住性>
--乗り心地--
 乗り心地はしっかりした足のために結構固めに感じ、突起の乗り越えでは”ズシン”とした衝撃感はある。タイヤはソフトに凹凸を受けている様子だがサスは固めだ。

--静粛性--
 アイドリングは3気筒のために”ゴロゴロ”した感じのサウンドとバイブレーションが入ってくるが、ノイズは特に大きくはない。一旦走り出してから信号などで停止すると、基本的にMTやATのドライブモードではアイドリングはストップしすこぶる静かだ。エンジンノイズそのものは高速になってもさほど大きくはなく、逆に少々ロードノイズを感じるぐらいだ。全体にノイズは標準的なものと言える。

<ユーティリティ>
トランクルーム
カップホルダー
リヤウインド
 リヤハッチを開くと・・バッテリーとPCUが詰まったために荷室は狭いが、小型のトランク程度はこのトレイの下に隠せる。  センター・コンソールには2つのカップホルダーが用意。  2段リヤウインドは意外に後方が見やすい。
 トランクスペースはリヤハッチのデッキの下とその上だが、デッキしたの大部分は144ボルトのニッケル水素バッテリィやPCU(パワーコントロールユニット)が搭載されていて、ほぼバックレストの高さまでそれらの補機が詰まり、その後部にある荷室は139リッターと小さい。が、小型のトランク程度は隠せる。それ以上の荷物はリヤのデッキの上に搭載する。ここならゴルフ・バッグの2個程度は押し込めそうだ。

<ハイブリッドの走り>

フルスロットルでも好燃費

 エンジンをスタートさせ、交差点で停止するとアイドルストップする(ATのSレンジと、エアコン使用中は停止しない)。但し、渋滞のようにストップアンドゴーの場合も停止しない。ATでアクセルを踏むとスムーズにエンジンは始動する。体感的には1秒もかからない感じなので苛々感はまずない。MTの場合はクラッチを踏むと途端に始動してくれ違和感はなかった。フルスロットル加速をするとモーターのインジケーターがアシストしていることを示し、スロットルを戻すと今度は充電のインジケーターがそれを示す。ブレーキングすれば即座にエネルギーを回収し、無駄なく利用しているので得した感じがある。
 テストのためにわざとフルスロットルを連続する、およそこの車の設計ポリシィとは逆の走りをしたが、それでもリッター16km程度の平均燃費で(私の前に試乗した人の燃費が良かったのも一因だが)確かに群を抜いて燃費が良いのに驚いた。

<気に入った点>
 燃費は流石にどんな乱暴な走りをしても良く、またアイドリング・ストップもCO2削減に協力していることが肌で感じられる。スタイリングやインテリアも楽しめる。ハンドリングも実用的なハイレベルにある。

<気になる点>
 荷物の搭載量が少なく、二人乗りはやはりハンディ

<FCD(Fuel Consumption Display)>
 燃費表示ディスプレイ
これはメーター正面にあり、ダッシュパネルのセレクトスイッチで、平均燃費や任意の区間の平均燃費がチェック出来、楽しい。
 また、燃費は常時表示されていて、燃費を上げながらのドライビングが研究できこれも退屈させない。

<まとめ>
サイドビュー
 フロント、リヤのバランスのよいサイド。

 このハイブリッドが発表された時、3リッターカーをー目指すために、コンパクトで軽量な2シータークーペにした点がギミックに感じて不満だった。プリウスも他のこの手の車も5人乗りセダンだったらからだ。当然2シータークーペが有利で、是非同じ5人乗りセダンで勝負して欲しかったと思ったものだ。 だが、試乗して多少意識が変った。例え2シーターであろうと、3リッターカーをこのプライスで提案したことに大いに意義があると思い始めたのだ。通勤や仕事の移動では大抵、一人か二人乗車の場合が多い。その場合なら、このインサイトでも充分間に合うはずだ。地球環境を守るために我々もそろそろ真剣に意識を持ちたいものだ。2シーターのスタイリングがまるでGTカーなので、つい、スポーティーな動力性能と操縦性を期待してしまうが、エコカーのスタイリングも高性能スポーツカーと同じコンセプト(高い空力特性、軽量ボディ)が必要なのだと思うと納得でき、それなりの走りをしたいものだ。

*お断り  愛用のニコンCOOLPIX950が雨のTTクーペの取材で故障。動画用の35万画素のVN-EZ1で取材したため画質が低くなってしまいました。暫くご容赦下さい。

インサイト グレード 排気量 PS Torque
(kgm)
車重 最少回転半径
(m)
10・15モード
燃費(km/l)
W/P
ホンダマルチマチックS 995 75.5 12.9 850 4.8 32.0 11.26
5MT 995 76.0 12.9 820 35.0 10.79
W/T C/P C/T PS/L 0−100km/h C/G 価格
ホンダマルチマチックS 65.89 28.87 168.99 75.88     2,180
5MT 63.57 27.63 162.79 76.38 2,100
*価格は全て千円単位
*W/P
パワーウェイトレシオ 1PSあたりの車重(kg/ps)
*W/T
トルク・ウェイト・レシオ 1kgmあたりの車重(kg/kgm)
*C/P
コストパワーレシオ 1PSあたりの価格
*C/T
コストトルクレシオ 1kgmあたりの価格
*PS/L
エンジン容積1リッターあたりの馬力。
*0−100km/h カタログに無記載。
*C/G
コスト加速レシオ、0-100km/hの時の平均加速の0.1G加速あたりの価格(\/0.1G)
(車両価格/100km/h÷0-100km/hの時間÷0.98)
つまり、同じ加速をするのに、コストパフォーマンスが判る。
いずれの指数も数字が小さい方が性能やコストパフォーマンスが優れていることになる。
(ただし、車の装備や付加価値は無視している。)
●パワーとトルクはエンジンとモーターの出力の合算


Update:1999/11/22



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